宮藤官九郎作品を見ていると、常に私の頭の中をある言葉が渦巻く。 「この世は残酷である」 これをひたすら伝えたくてクドカンはあらゆる物語を作っているのではと思うほどだ。それを特に強く思わせたのが他でもない『あまちゃん』である。NHK朝ドラですらクドカンはその手を止めなかった、いやむしろ他の作品よりも一層その傾向を強めたのだ。 「ま…結局は運よね、運がなかったのよ、そのコは」鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の台詞である。これはアキ(能年玲奈)の母親 春子(小泉今日子)が音痴であった鈴鹿ひろ美のゴーストシンガーとなるほど有望であったにもかかわらず、なぜアイドルとしてデビューできなかったのかの理由を彼女がそれとは知らず語る場面で吐かれる言葉である。 当時マネージャーであったアメ横女学園プロデューサー太巻(古田新太)と彼女は恋仲であり、春子の歌声のお陰で売れっ子アイドルとなるも、女優に専念したがった鈴鹿の