朝日新聞記者 旅を旅するグギ・ワ・ジオンゴでもなく村上春樹でもなく、ボブ・ディランだった。 きのう、日本時間の午後８時、２０１６年のノーベル文学賞が決まった。スマートフォンに届いた速報通知を目にして、ぐっとこう、なにか、胸にくるものがあった。 関西の田舎の高校から東京に来て、大学１年でディランに出会った。 １２年以上前のことになる。友人がカラオケでがなっていた。風に吹かれて、ライク・ア・ローリング・ストーン、ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア……。サイコーにロックで、サイコーにヒューマンだと思った。すぐ好きになった。 最寄り駅のツタヤでＣＤを借りてiPodに入れて、口笛をくちずさみながら（悦に浸って）散歩したり、デートの帰りにカラオケでひとり歌ったりした。サイコーにダサくて、かっこいいかっこつけ方のわからない、そんな大学生だった。 ノーベル賞の選考理由にはこうある。 "for having created new p
