9月号では「人とまじめに話し合うことで思い込みからも解放される(ことがある)」という話しをした。ついでに今月は、「話し合って理解を深める」認知理論をまじめに生かそうという学習設計を紹介したい。学習科学という最近それなりに盛んになりつつある研究分野の一部で、「話し合いを通して一人一人の理解を深める」協調学習について、いろいろな理論的、実践的研究が行われている。 アメリカの話しだが、1990年代の後半に、小学校高学年から中学校の算数・数学を協調的に教えるジャスパー・プロジェクトと呼ばれる実践研究がかなり話題になった。主に教育困難校の生徒を対象に問題解決能力を育成するプロジェクトで、ドラマ仕立てにしたビデオに出てくる問題をみんなで解決しようという筋書きになっている。今回は、まず作った人たちの算数・数学教育に対する考え方を少しだけ解説した後、シリーズの中から一つの課題を紹介し、こういう教え方にまつ