「あの事件は何だったのか。あいつらは誰だったのか。そればっかり考えてる。青春を返してくれですよ(笑)。85年に日航のジャンボ機墜落事故が起こったときも、自分だけは『かい人21面相』を追っていた」 発売2カ月で5万部を超えたベストセラー小説『罪の声』(塩田武士著)。グリコ・森永事件を題材とした本作では、新聞記者の阿久津が、執念の取材の果てにひとつの真実にたどり着く過程が描かれている。 言うまでもなく、阿久津は架空の人物だ。しかし、現実の世界にも未だグリコ森永事件を追い続けている「執念の男」がいる。「ミスター・グリ森」と呼ばれた、元読売新聞記者・加藤譲氏の姿を、塩田武士が描く――。 「ミスター・グリ森」と呼ばれた男 昭和末期、大手製菓会社の社長が自宅から連れ去られたのを皮切りに、放火や青酸菓子のばら撒きなど1年5ヵ月にわたって前代未聞の展開を見せた警察庁広域重要指定114号、通称「グリコ・森永