「日本の反知性主義」というタイトルはリチャード・ホーフスタッターの名著『アメリカの反知性主義』から借りた。この書物の中で、ホーフスタッターは、アメリカ社会は建国のときから現在に至るまで、知性に対する憎悪という、語られることの少ない情念を伏流させてきており、それは間歇的に噴出してそのたびに社会に深い対立と暴力を生み出してきたという大胆な知見を語った。急いで付言しなければならないが、ホーフスタッターはこれを単純な「知識人対大衆」の二元論として語ったわけではない。経験が教えてくれるのは、知識人自身がしばしば最悪の反知性主義者としてふるまうという事実である。ホーフスタッターはこう書いている。 「反知性主義は、思想に対して無条件の敵意をいだく人々によって創作されたものではない。まったく逆である。教育ある者にとって、もっとも有効な敵は中途半端な教育を受けた者であるのと同様に、指折りの反知性主義者は通常