1年半にわたってコロナ禍と向き合ってきた東京都の関係者にとっても、その感染者数の伸びは想像をはるかに上回るものだった。 「想定外ですよ」 新型コロナウイルスの1日あたりの感染者数が5042人と、初めて5千人を超えた8月5日夜。ある都幹部は、2度繰り返した。第5波が本格化した都内では、7月28日に初めて3千人を上回ると、3日後の31日に4千人、その5日後の8月5日には5千人を超えた。 この幹部は7月中旬、都内での感染状況の見通しについてこう語っていた。 「ワクチン接種の進み具合がどれほど感染を抑え、デルタ株の流行がどれだけ感染を広げるかの兼ね合い。経験したことのない状況でなかなか読めない」。これまでの変異株よりも感染力の強いデルタ株が、感染拡大を引き起こしかねないとの見立てだった。 その懸念は、当時できた想定を大きく上回る形で現実となる。 感染者数が5千人を超えた8…