黒潮を回遊するカツオが、日本近海に姿を現すのは毎年4~5月。それが江戸っ子の待ち焦がれた初ガツオである。その後、カツオは9月ごろまでに東北沖を北上し、10月になると、再び南下する。これが秋にとれる「戻りガツオ」。江戸っ子は初ガツオばかりを珍重して、戻りガツオには目もくれなかったが、肝心の味では戻りガツオに軍配が上がる。これは好みの問題もあろうが、戻りガツオの方が脂がのっていて、旨いというのが通り相場である。ところで、カツオの味はよく知られていても、海の中のカツオのことは、あまり知られていないようだ。カツオは、マグロと同じサバ科の魚で、成魚の体長は平均1・2mにもなる。流線型のスリムな体つきは、いかにも泳ぎのスペシャリストといった風情だが、実際、大型回遊魚の中でも、カツオの泳ぎはトップクラスのスピードを誇る。時速160キロを超えるというから驚きだ。とはいえ、「そんなに急いで何処へ行く?」と首