君は実にバカだな 僕は、彼が猿たちの群れに呑みこまれて、文字通りの意味で呑まれていくところを見ていた。彼は絶叫し絶命した。肉はなめるように味わいつくされ、筋や内臓や骨に至るまでしゃぶりつくされた。のどごしさわやかあとあじすっきり。猿たちは、芸術のわからぬ若者に鉄槌を下したと、キーキーと喜んでいた。 だが、ちょっと待って欲しい。 100匹目の猿なんてただの作り話だし、現実問題として猿がシェイクスピアを書くはずもない。じゃあ彼はどうして「猿の小説」なんてものがあると思ったのだろう。これはおかしい。まったくもって不思議だ。驚天動地大山鳴動吃驚仰天天地無用のミステリーだ。そう思わないか。 では、推理してみよう。一番目、彼が読んだ小説は彼自身の妄想に過ぎなかった。二番目、彼は人間が猿に見える奇病を患っていた。三番目、そもそも最初から彼は幻覚をみていた。…この三つの可能性が考えられるだろう。他の可能性
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