ある中学校の二年生が遠足に行った、その帰り道。 生徒たちを乗せたバスが高速道路に入ってしばらく走ったあとのことだったという。 バスの真ん中辺りの席に座っていた一人の男子が、急に立ち上がって叫び始めた。 「窓の外を見るな!絶対に見ちゃダメだ!」 周りに呼びかけるその様子があまりに必死で、一同は呆気にとられたが、なぜ外を見てはいけないのかがよくわからない。 それに見るなと言われればついつい見たくなるのが人の性というものである。 生徒たちの半数ほどが窓の外に目を向けた。 その時バスは山の中を走っていた。その、左側に見える斜面の中ほどにトタン板か何かでできた小屋が建っていた。 小屋の脇には髪の長い人影が立っていた――のだという。 時刻はすでに六時半を回り、辺りは随分暗くなっていたというが、それでもなぜかその人影はよく見えたらしい。 奇妙な点はまだあって、その人影は小屋よりも背が高かった。 小屋が小