例えば、スーパーカミオカンデの信号検出精度が落ちたとすれば、これはもう壁面のセンサが経年劣化したとかそういうことではなく、内部に蓄えられた純水の純度が低下したことが考えられる。そしてその純度低下の原因となったのは、何を隠そう検出対象たるニュートリノ自身だったりするわけである。 それはなんでかといったら、宇宙のはてより飛来するニュートリノのヤロウったら、実は情報媒体に使われてたりもするわけで、保持する情報が悪に属するせいで純水がよごれちゃったのである。 「えー! いやまあニュートリノを情報媒体に使うってのは百歩譲ってアリだとしても、飛来したニュートリノが情報なり信号なりだってことわかるもんなの?」 「バーカおまえ水は何でもしっているんだよ。神のプロトコルもヒトの善悪も」 と、そのとき一つのニュートリノが僕を貫いた。僕を構成する70%の水分は神の悪意に犯され、何の脈絡もなく眼前の同僚を撲殺した