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2010年8月31日のブックマーク (1件)

  • 柚子 - 春巻たべた

    では明後日にまた参りますからね、良いですね先生、よろしく頼みましたよ、玄関先で見送る私にそう何度も念を押し、ようやく加藤は帰っていった。やっとのことで邪魔者を追い返した私は、元通り文机*1に座り、さて、と呟いて、茫漠と庭を眺めた。ここ数日降り続いた梅雨の長雨の、僅か*2な晴れ間のことである。 加藤は私が目下世話になっている雑誌、「奇拔讀物」の編集である。誌名から大方察せられるとは思うが、紳士ならば眉をひそめて近づかぬ類*3のいかがわしい雑誌であるから、御存知ないのも無理は無い。私はこうした雑誌のいくつかに雑文を書き散らかして暮らしている。特段筆に覚えがあるわけではないのだが、毎日のように新しい雑誌が世に出る昨今、どこも書き手には事欠いているらしく、私のような素人でも、どうにかしのげるくらいの実入りにはなった。ちなみに私が先号の「奇拔讀物」に寄せたのは、「犬と同衾せし令夫人」なる記事である。