「父さん、これからはワクチンで勝負する」 僕も含めて家族は、そうじゃないかと薄々は感づいていた。なぜなら、僕たちは、もう芋を生産しているからだ。だから母さんも、姉も僕も反対しなかった。 僕らが生産するのは、畑で育つ芋じゃあなくて、毎朝、腕や背中に瘤がむかごのように生えてくるあの芋だ。地球温暖化問題などの社会情勢の変化の中で、僕たち家族は芋を仕事にするようになった。 二十一世紀初頭、貧困と格差の問題は前世紀から持ち越されたままであったが、時の総理大臣馬延晋作の手によって解決した。封印されしマノベノミクス第四の矢が国会議事堂の地下より発掘されたのだ。 それは、地球温暖化問題と食糧問題、格差と貧困、さらには不景気を同時に解決すべく、人間に葉緑素を移植するという奇策であった。葉緑素を移植した人間は植物人間と呼ばれた。植物人間になると、光合成により体内に栄養素が生み出され、食費が減る。また、移植する
![ワクチン人間 - 法正林思想(ナカノ実験室) - カクヨム](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/045fb183a3b3981400cfc234e217abf101a9d2ca/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn-static.kakuyomu.jp%2Fworks%2F16816700426833610515%2Fogimage.png%3FeqSdDkZNkZQz-v1hLBuFdhyPgHs)