海音寺潮五郎さんは第3回(昭和11年)というかなり早い時期の直木賞を受賞しています。受賞作は一般に『武道伝来記』と『天正女合戦』と言われます。まだ直木賞も創設直後であり、 どの作品が候補作で、 結果として受賞作はこの作品である という規定が不明確だったために、海音寺潮五郎さんも「一般にはこの2作品だとされる」という曖昧な状態になっているそうです。 海音寺潮五郎さんは、受賞作であるこの『天正女合戦』の構想を発展させて、後に『茶道太閤記』を執筆しています。そこで扱っている素材は共通しており、豊臣秀吉と千利休という当時の二人の巨人の対立を軸に、かれらを取り巻く人物たちが入り混じり、確執を繰り広げていく物語になっています。