近鉄名古屋駅のホームからオレンジ色の電車に乗り込んだ。時刻はもう9時を回っている。そういえば夕飯も食べてない、と思い出してチッと舌を打った。 本社から残業時間を減らすように指令があったため、「残業を減らすにはどうするか」というゴミのような会議が夜遅くまで続いたのだ。シートに座るなり眼鏡を外して目を瞑った。 名古屋に転勤になって数ヶ月が過ぎた。関東育ちのおれにとって近鉄というとかつてパ・リーグに存在していた球団という印象しかなく、まさか自分の通勤電車になるとは思ってもいなかった。 といっても関西にも縁はなく、おれにとっての近鉄は愛知県内の自宅と会社を通勤するための路線である。「名古屋線」と名乗るこの線の反対側がどこにつながっているのかなんて、深く考えた事はなかった。仕事の疲れでそんな暇もなかった。 少年の頃は実家の前にあるぶっとい国道を見て、この道は一体どこまで続いてるんだろうなんて考えたり
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