先進国で「食糧危機」が起こる確率はゼロであり、「食糧安全保障」などという政策を掲げているのは日本だけだ。こんなことは経済学の常識だが、日本では山下一仁氏のような改革派まで「中国の爆食で食糧危機が来る」という類の話をするのは不可解だ。著者は戦時中の食糧不足の経験が原因ではないかと推測しているが、そんな世代はもう影響力はないだろう。単に政治家とマスコミが馬鹿なのではないか。 中国の食糧輸入増はブラジルなどの増産で埋め合わされ、輸入量は減り始めている。「人口爆発で数十億人が餓える」というのも嘘で、2040年ごろをピークとして世界の人口は減り始める可能性がある。農地にはまだまだ余裕があり、農業技術の生産性も今の数倍になる余地がある。問題は食糧の絶対量ではなく、それを買う経済力である。2007〜8年の穀物価格の暴騰によって途上国は食糧危機に見舞われたが、日本ではあんパンが10円値上げになっただけだ