女性の誰かが殺されると、たちまち「美人OL殺人事件」「みんなに慕われていた美人ナースの無念」などと書き立ててしまう。「首なし美人死体」と書かれたケースすらあったそうだ。首がないのに美人、だそうである。被害者でも加害者でも、犯罪に女性がかかわる度、女性の美醜で扱いの多少を決めてきた。つまりそれはメディアの主語を握っているのが「オヤジ」である何よりの証拠だ。インターネットで知り合った10名以上もの男性から総額1億円以上の金銭を奪い、恋愛下手な中年男性を次々と死に追いやった毒婦・木嶋佳苗は、何よりもまず、その「不細工」な容姿を語られた。なぜこの風貌で、この肥満体型で、男をダマせたのか……首がなくても美人と書く面々が、一斉に不細工と書き立てた。 木嶋佳苗は、役者だ。大女優だ。「嘘をつく」「演じる」というレベルではなく、振る舞いがまるごと女優じみている。法廷に出向いた著者の北原は、木嶋がボールペンを