今、人類は実は画期的な危機に瀕(ひん)しているといえるのかもしれない。それは人間の存在そのものを危うくする二重三重の致命的な障害となって迫ってきているのに、それをそのまま複合的に捉(とら)える見識が世界の指導者たちに備えられているとはとても思えない。 一つは高度な文明がもたらしたこの地上での自然の循環の阻害による環境破壊。そしてそれに起因したともいえる物価高騰による世界インフレの到来。加えて、私たちの想像を超えた不可知に近い、しかし過去を眺めれば歴然として存在する、ある周期をおいて確実に発生してきた強力な新しい疫病蔓延(まんえん)としてのH5N1型鳥インフルエンザの到来。 この第三の危機たる硬性強毒型の疫病は、技術と金のある国家にとってはある程度防御可能な危機ともいえるかも知れないが、それは結果として世界中に広がりつつある国家間のいちじるしい格差を無慈悲に淘汰(とうた)してしまいかねない。