スマートフォンの画面を固定し、台本を入念にチェックする。撮影前の準備が整うと、慶応大3年の関根摩耶(まや)さん(20)が視聴者に向けて、語り掛ける。 「おいしいはアイヌ語でケラアン。漫画『ゴールデンカムイ』に出てくるヒンナヒンナは命に感謝を述べる言葉なんですよ」―。 昨年4月、学生の日常会話をアイヌ語に訳して紹介するチャンネルを、動画投稿サイト「ユーチューブ」に開設した。民族の言葉が消滅する危機に、アイヌの血を引く若い世代が立ち上がった。(共同通信=小川まどか) アイヌ語は日本語とは文法的に全く異なり、他のどの言語とも親戚関係にないと考えられている。現在、母語とする話者はほぼいない。衰退の背景にあるのは明治政府が推し進めた同化政策だった。 『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修を担当した千葉大の中川裕(なかがわ・ひろし)教授(言語学)は「日本語が話せないと経済的に立ちゆかなくなる状況で、家庭内
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