最新モードも伝統衣装も、いったん身にまとわれると衣服は生活や文化の一部となり、ひいては社会や政治の問題となる。 98年の北朝鮮ミサイル実験、また最近では拉致問題などで、朝鮮学校の女子生徒たちがチマ・チョゴリ制服を切り裂かれるなどの被害にあっているという。チマ・チョゴリは国家の象徴に読み替えられ、卑劣な暴力の的となった。しかし、北朝鮮や韓国ではチマ・チョゴリという民族衣装を制服として着ることはない。ではなぜ在日の生徒たちだけがそれを着ているのか。 韓東賢の『チマ・チョゴリ制服の民族誌』(双風舎)は、衣服の背後にある隠された歴史に迫る興味深い本である。チマ・チョゴリは60年代前半、在日朝鮮人による「祖国志向」のナショナリズムが高まる中で学校に導入されていく。だがそれは在日コミュニティーや学校側が「上から」押し付けたのではなく、むしろ女性たちが自発的に着るようになったのが発端であった。彼女たちは