――世界各国でインフレ基調が強まった結果、「MMTの間違いが証明された」「MMTは必要なくなった」とする論調があります。今のインフレをどう分析していますか。 そもそもMMTは「インフレが起きない」とは言っていない。 2020年にコロナに直面した際、オーストラリアでは人々の所得の大部分が政府によって守られたが、ロックダウンによってレストランにも映画館にも行けず、家にとどめられた。結果、人々はオンラインショッピングにかけこんだ。家のリノベーションをするため資材を買い込んだ人もいた。 それによってサービスへの支出は大きく減少した一方、実物の商品に対する需要が増加した。そこで不均衡が生じた。供給側では、商品を供給する工場が操業を停止し、輸送システムが深刻な混乱をきたした。 コロナ禍において、ほとんどの国で総支出はそれほど変化していない。実際に起きたのは総支出の増加ではなく、サービスから商品への支出