朝日新聞の書評を見て購入した佐原徹哉『ボスニア内戦』(有志舎)を読む。ボスニア内戦の原因とその経緯について、すばらしくよく調べられ、簡潔にまとめられた好著。著者、ぼくと同い年なんだなあ。これを読んでしみじみ思ったのは、人間はいかに愚かなのかということである。人間は愚かで進歩を知らない生き物だ。こんな一節がある。 ジラスが村に入ると、頭を後ろから撃ち抜かれた二人の農夫の遺体が大きな梨の木の下に横たわっていた。そこでは他に六人が殺され遺体は運び去られていたが、幾つもの黒ずんだ血跡が草の上に残っていた。さらに進むと、道の真ん中に二〇人程の遺体が山になっていた。成人男性の遺体は二つしかなく残りは女性と子供たちだった。近くにはまだ温もりが残る揺りかごが転がっており、頭部を砕かれた嬰児の死体が傍らにあった。赤ん坊の左側には胸部を叩き潰され腹部がぷっくりと膨らんだ女の子の遺体があった…… これはスレブレ