三国時代の本当の姿がここにある。宮城谷昌光さん(68)が12年がかりで完結させた中国歴史小説『三国志』(文芸春秋、全12巻)は、そう思える渾身(こんしん)の大作だ。広大な大陸を舞台に後漢中期から三国時代の終焉(しゅうえん)まで、約160年の長大な時間と向き合うことで何が見えてきたのか。 「演義」排し正史に立ち戻る 「書き終えた後も多忙で感慨にふける暇はなかった。ただ、体は疲れを知っているらしく、両腕に痛みがでました」。自身一番の大作を終えて、そう息をつく。 乱世に現れた劉備(りゅうび)、関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)の義兄弟が、諸葛孔明(しょかつこうめい)という名軍師を得て、曹操(そうそう)、孫権(そんけん)らと覇を争う三国志。その一般的イメージは、後世に小説化された「三国志演義」によるが、諸葛孔明の天才ぶりや曹操の悪役像など、勧善懲悪的な誇張や虚構も多い。 「怪力の張飛が1人で何万人も