公園のゴミ箱が消えた。 そのゴミ箱は、巨大なフェンスのように丸く、鉄の編み編みになっていて、僕が小さいころから、雨の日も風の日も、公園の入口に揺るぎなく立ち続けていた。 僕は二十代のころ、仕事帰りで公園を通りかかったとき、コンビニ袋に入れた弁当の容器やジュースの空き缶を、そのゴミ箱へ投げ込んだ。 すると、それを目撃していた町内会長の爺さんが飛んできて「ゴミを捨てるな!」と怒鳴った。僕は、なんで、ゴミを、ゴミ箱へ捨てたのに怒っているんだ?と思ったけれど、スグに察した。 要するに、ゴミは自分の家で捨てろということなのだ。僕は口をゆがめて爺さんを睨みつけながら、無言でゴミ箱からビニール袋を拾った。 人生で、二番目に屈辱的な瞬間だった。 あれから10年が経ち、街中からゴミ箱が消えた。公園はもちろん、駅のコンコースやバスターミナル、最後の砦だったコンビニからも姿を消した。 その原因は、ゴミの分別収集