残酷だから具体的・即物的な描写を子供に伝達する必要はないというのは、間違っている。第二次大戦は実際に神話的なアスペクトをもった戦争だった。普通の帝国主義戦争としての側面をいまは強調し、神話的側面は宣伝であったという言説が有力になりつつあるが、間違っている。そのうえ、さらにそこから切断されて、原爆の異様性は、その現実的感触を忘却しなければ、それを政治的に意味づけたり利用したりできないという性格のものだ。これは冷戦の核の特異性とも「違う」。使用された核と、使用されない核の意味は、やはり、決定的に違うのだ。使用されない核は、それがどれほど神話的で異常に政治的なインパクトを持っていたとしても、政治の範囲にとどまりうるものでしかない。わたしたちは、あたかも原爆を、政治的に利用されうるもののようにして語り、現に政治的に利用された神話として受け取り、それゆえに否定したりするが、そのことこそ、原爆の現実性