病気、それも大きな病気を経験した人の多くは「食べることの喜び」をしみじみと感じる瞬間を経験したはずだ。手術をすれば何日も食事が許されないことがある。慢性の病なら様々な食事制限もある。カロリー制限、塩分制限、糖分制限、脂肪制限、たんぱく質制限云々。がんで抗がん剤治療を受けると、吐き気や食欲不振などに苦しんで「食べていい」と言われても食べられないということもある。抗がん剤治療により白血球数が減少すると、場合によってはより厳しく衛生に気を配った食事をしなくてはならないこともある。 なんの不安もなく、食べたいものを食べたい時に食べられるというのは、実はとても贅沢なことだ。 が、「食べること」にまつわる様々な経験も、癒える病であれば、いつの間にか忘れていく。ときどき「あの時はつらかった」と思い出しつつ「暴飲暴食は避けよう」というほどの教訓を得て。 しかし一旦患ったら、そんな生易しいことではすまない病