話し言葉に「方言」があるように、漢字にも「地域漢字」や「地域音訓」が存在します。 中国で生まれた漢字が、起伏に富んだ日本列島の地形や風土をどのように表現してきたのか、豊富な事例で解説する『方言漢字』から、本文の一部を公開します。 「都」に流行るもの 京都での会合の前に、市内を散策してみる。どこか空気にピンと張ったようなところがある。屋根瓦の重そうな鰻の寝床が建ち並ぶ。そして、さすが千年のみやこ、「都」という漢字がどこにでも書かれている。東京からの新幹線の車内で座席を立とうとする時点で、電光掲示板に次の停車駅は「京都」と表示が出る。ドット文字ながら明朝体風であり、やはり日本を代表する車両に出るその地名にふさわしく惚れ惚れするような見事なバランスに仕上がっていた。 前から京都を歩くたびに、気になっていることの一つが、その「都」という漢字の姿だ。それは、「東京」は昔、「東亰」と書かれ、京風を嫌っ