写真だけが一人歩きしていた一方、「ナパーム弾の少女」の写真はさらに有名になり、現実の彼女を置いてきぼりにしたまま、その切り取られた一枚だけが一人歩きしているような感覚だったという。 数えきれないほどのメディアからインタビューを受け、世界の王族や首脳たちとも面会し、「皆があの写真と私が経験したことに何らかの意味を見いだそうとしているようでした。あの逃げる子供が、戦争の恐怖を象徴するものになっていたのです」。 そんなシンボルにまつり上げられた彼女を、影から見つめていたのは現実世界を生きる本物のキムフックだった。「何かの拍子で自分が傷んだ人間であることがバレてしまうのではないかと恐れおののきながら」 キムフックは続ける。 「写真は本来、ある一瞬を切り取るものです。しかし、このような写真のなかで生き残った人々、とくに子供たちは、何とかして前に進まなければならない。私たちはシンボルではありません。人