☆ ☆ ☆ SCは6月末での契約終了を強く求めてきたが、業務の引き継ぎを考えるとそれはあまりに性急だとぼくは感じた。せめて8月末まで待ってほしいと希望を伝えたのだが、SCはあくまで6月末にこだわったので、ぼくも折れるしかなかった。契約終了の合意書の作成にあたっては素人の手に負えないので、かねてからその仕事ぶりに敬意を抱いていた喜田村洋一弁護士に代理人をお願いした。 この期に及んでも、どうしてもぼくに飲み込めないことが一点だけあった。周水社長からの報告という形でしか聞いていない山下夫妻の〈賛成〉だ。周水くんを疑ってはいない。ただ、四半世紀におよぶ付き合いのなかで自分が知る達郎さん、そしてまりやさんなら、本当に〈賛成〉するだろうか。その疑問が払拭できなかった。 「義理人情」という言葉はたしかに重い。それはいいだろう。だが、その形は、時代にあわせてしなやかに変わっていくべきではないか。紙風船のよ
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