「ごく普通の」国家が、日々の生活に知らぬ間に忍び込み、人々の行動や考え方をだんだんと支配するようになる――。フランスの寓話『茶色の朝』に描かれたこの世界について、「私たちと無縁ではありません」と語るのは、本書の日本語版にメッセージを寄せた哲学者・高橋哲哉さん(東京大学大学院教授)だ。共謀罪の成立や憲法改正に向けた議論が進む中、「思考停止になっていると、日本も“真っ茶色”になりかねませんよ」と警告する。 「茶色」が広がっていくのをやり過ごしてしまった“俺” 20年前にフランスで刊行されベストセラーとなった『茶色の朝』は、「茶色以外のペットは処分するように」という法律を皮切りに、“俺”と友人シャルリーの身の回りで次々に「茶色」以外の存在が認められなくなっていく物語だ。 なに色だって猫にはかわりないのに、とは思うが、なんとかして問題を解決しなきゃならんというなら、茶色以外の猫をとりのぞく制度にす
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