リヤカーは今から100年ほど前、オートバイのサイドカーと江戸時代からあった大八車をヒントに、日本で開発された運搬用具だ。 第二次世界大戦後の復興期に需要が拡大し、東京の下町には専業メーカーが林立した。しかし、1960年代に入ると荷物運搬の主役の座を軽トラックやオート三輪に奪われ、需要は急減。隆盛を誇った工場も次々と閉鎖に追い込まれた。 そんな中、東京・南千住にあるリヤカーメーカー、ムラマツ車輌は、今も生き残っている。 今年で創業57年を迎える。年商は2億円で、在籍する従業員は職人歴20年以上の熟練工ばかり約10人。「この21世紀の時代に、職人をこんなに抱えてリヤカーなんてものをつくってるのは、日本でうちだけだと思うよ」。社長の村松孝一はこう笑う。 屋台用や花屋向けなどさまざまな分野に残存者利益