もしかしたら2020年の初めに、大きな話題が集まるかもしれない。そんな映画がある。HIKARIが撮った『37セカンズ(37 Seconds)』だ。 この映画、今年2月のベルリン国際映画祭のパノラマ部門で観客賞と国際アートシアター連盟賞をダブル受賞したのを皮切りに、9月のトロント国際映画祭でも熱い支持を集めた。今年のトロントは是枝裕和、新海誠、三池崇史、黒沢清、深田晃司という錚々たる日本人監督の新作が並び、どれも好評だったなか、長編デビュー作のHIKARI監督も彼らに負けないほどの歓迎ぶりで、上映会場は満席。映画の終盤では、筆者の周囲の観客のほとんどが頬をつたう涙をぬぐっていた。そして上映後は大きな拍手に包まれ、夜11時にもかかわらずQ&Aにはほとんどの観客が残ってHIKARI監督の話に耳を傾けた。 大阪出身で南カリフォルニア大学大学院の卒業制作で短編を撮り、現在はロサンゼルスと東京を拠点と