朝起きると、しとしと雨が降っていた。 嬉しい物件の契約日のはずだったが、前日ドタキャンされたため、予定のないただの休日になった。 そりゃあショックだった。新しい家にはどんな表札を付けようか選んでいた最中だったし、郵便ポストだって何色がいいか、カーテンは薄手の生地で遮像のものにしよう、とか、庭木を整理するためチェーンソーを借りる手配も進めていた。 室内ドアはペンキを塗って、トイレの床もオシャレなクッションフロアシートを貼り直そうと決めていた。 これから忙しくて楽しい日々が来るはずだったのに、売主の気まぐれで人生が変わってしまった。契約前のキャンセルだから、このやるせない気持ちをぶつける先がない。不動産会社に当たるのも違うと思う。あちらも被害者だ。 またぐっと我慢して飲み込んで、消化するのを待つしかない。 謝罪と説明を受けたスタバのテーブル席は、そりゃあ重い空気だった。不動産会社の所長からは、