❄️🎼 冬待人 written by のる❄️ 明るい月が空にあって、 雪の光と照り合っている庭をながめても、 院の御在世中のことが目に浮かんできて 堪えがたい気のするのを源氏はおさえて、 「何が御動機になりまして、 こんなに突然な御出家をあそばしたのですか」 と挨拶を取り次いでもらった。 「これはただ今考えついたことではなかったのですが、 昨年の悲しみがありました時、 すぐにそういたしましては人騒がせにもなりますし、 それでまた私自身も取り乱しなどしてはと思いまして」 例の命婦《みょうぶ》がお言葉を伝えたのである。 源氏は御簾《みす》の中のあらゆる様子を想像して悲しんだ。 おおぜいの女の衣摺《きぬず》れなどから、 身もだえしながら悲しみをおさえているのがわかるのであった。 風がはげしく吹いて、 御簾の中の薫香《くんこう》の落ち着いた黒方香《くろぼうこう》の煙も 仏前の名香のにおいもほの