比類なき輝きを放つ作品群を遺すとともに、「脱原発」など社会運動にも積極的に取り組んだ無二の音楽家、坂本龍一。その多面的な軌跡を「時代精神」とともに描き出す佐々木敦さんの好評連載、第11回の公開です! 1 カンヌ国際映画祭、ベルトルッチ監督との出会い 『戦場のメリークリスマス』は、1983年の1月半ばに完成し、同年5月末に予定された、この種の芸術映画としては大規模な全国公開に向けて、宣伝チームが動き始めた。その際にもっとも重視されたのが、公開直前に開催されるカンヌ国際映画祭への出品である。大島渚監督は前作『愛の亡霊』(1978年)でこの映画祭の監督賞を受賞しており、カンヌの最高賞であるパルム・ドールの受賞は悲願でもあった。 書籍『『戦場のメリークリスマス』知られざる真実 ――『戦場のメリークリスマス30年目の真実』完全保存版』(WOWOW「ノンフィクションW」取材班/吉村栄一)には、当時の関