先回に続き「朝鮮戦争と韓国文学」というテーマです。今回はちょっと変則的ですが、当時、日本の読者たちにこの戦争の現状を伝えた作品群を見てみたいと思います。 開戦当時の日本はまだ主権を回復しておらず、新聞記者すら現地に送れませんでした。したがってその役割を中心的に担ったのは朝鮮語と日本語のバイリンガルの人々、具体的には広義の在日コリアンの作家・詩人たちです。 その中には実際に朝鮮戦争に従軍したり、記者として取材に赴いた人もいます。そのうちのある人はリアルタイムで従軍記を書き、ある人は戦線から戻って20年も経ってからその体験を小説にして発表しました。植民地からの解放と冷戦構造の形成過程の両方を経験しながら、彼らバイリンガルの文学者たちが朝鮮戦争をどう表現しようとしたか。その幅を感じていただければと思います。なお、主に現在は入手しにくい作品を扱っているので、その点はご了承ください。 ーーー 尹紫遠