もう四半世紀も前のことだ。アメリカ北西部の小さな町のマイナーリーグを訪ねたことがある。ネット裏にしかスタンドのない小さな球場で、大方のファンはスタンドの先に広がる土手に寝転がってスープパンをすすりながら、ルーキーたちのプレーを見ていた。試合前、地元チームのベースボールカード片手に球場にやってくる選手を待っていた私に、球団スタッフは私からカードを取り上げ、このカードの選手は彼、こっちはあの選手と、選手がやって来る度、サインをもらうべき相手を教えてくれた。 大柄な中年男がゲートをくぐって来るのを見つけたそのスタッフは、一枚のカードを私に示した。 「彼がオーナーだよ」 ただ一枚ユニフォーム姿でない自分が映ったそのカードに、そのオーナー氏は野球ボールをあしらったサインをして私に返してくれた。カードに映る彼の表情は誇りに満ちていた。片田舎の事業家でも、プロ野球チームを所有できるところに私はアメリカン