本連載は、「あしたメディア」の「社会を前進させる情報発信」というコンセプトに賛同し、国内外の先進的な広告事例の紹介を目的としている。しかし、今回は「きのう」の話からはじめることをお許しいただきたい。 誰もが知っていた広告を、誰も知らない 1998年6月19日、広告の歴史を変えることになる、一本のCMの放送が開始された。 画面に映し出されるのは、高級車に乗り込む重役然とした雰囲気の中年男性。「セガ・エンタープライゼス 専務 湯川英一」というスーパーが映し出される。どうやらセガのCMらしい。湯川専務の視線の先にあるのは、小学生の男子2人。彼らは、こんな会話をしている。 「セガなんてだせえよな!」 「プレステの方がおもしろいよな!」 スマホもタブレットもなかった当時、リビングのテレビにつないで遊ぶゲーム機は、子ども達の娯楽の王様だった。そのゲーム機の電源を切った瞬間、テレビにこのCMが映し出され