至高の狂気を描き出す作家、藤野可織の集大成がここに誕生! 私立大学の職員である鳩里は、ごくありふれた生活を送っている。決まった時間に出勤し、決まった時間に帰宅。ランチタイムには、身に着けたブランド品を同僚と自慢しあうなど、その生活は普通そのものだ。そんな「普通」な彼女が抱える秘密とは―――。 「ここからは出られません」というサインが輝いているのを見ている。これが私の毎朝の習慣。そのサインは、職場の最寄駅である地下鉄のホームの北の端にある。北の端とかんたんに言ってしまうとかんたんに見られそうな気がするけど、ホームは長い。エスカレーターやエレベーターや階段のために通路が狭くなった床の大きなタイル、肩に触れるくらいに迫ってくる壁の小さなタイルをいくつもいくつも越えたところ、改札の階へ上がることのできる最後の階段を通り過ぎてやっと通路が広くなって、でもその階段があるために天井が斜めになっているちょ