今日はまず、この『カプラン臨床精神医学テキスト』という精神科のテキストブックの表紙をご覧いただきたい。 表紙に描かれたたくさんの顔、たくさんの衣装からは、多様性を尊重する精神医療、文化を尊重する精神医療といったものが連想される。 この教科書には「DSM-5診断基準の臨床への展開」という副題もついていて、この教科書が、エビデンスにもとづいた精神医療のテキストブックであることも示されている。 だからこの表紙には、いまどきの精神医療の理念がギュっと詰まっていると考えて差し支えない。 理念は高く掲げてナンボだから、この理念に私はシンパシーをおぼえる。 しかし理念のとおりとは思えない現実もそれとは別にある。 たとえば精神医療がADHD・素行症・知的障害などと診断しそうな領域の人びとが、いわばオラつきスキルでサバイブしてきたとして。それがある日、福祉という領域に包摂されなければならなくなる。そのときオ