ヴァレリー・スピリドノフは自分の頭を他人の体に移植する最初の人間になることを志願した。(Photograph by Erika Engelhaupt) 2015年、脊髄性筋萎縮症を患った人物の頭部移植を計画した外科医がいた。手術は実現したのか?その結末は? 書籍『科学で解き明かす 禁断の世界』から抜粋して紹介する。 ギャラリー:蘇生を願い、人体を冷凍保存する人々 写真16点 ヴァレリー・スピリドノフはひどく小さく見えた。彼が着ているものはどれも真っ白だった。シャツからズボンから靴下まで全部だ。電動車いすに体を固定しているストラップだけが黒だった。スピリドノフの病状は深刻だ。彼は脊髄性筋萎縮症というまれな進行性の運動ニューロンの病気を患い、ゆっくりと死に向かっていた。 スピリドノフはまだ動く左手を使って車いすを操作しながらホテルの会議室に入ってきた。そこで彼は改めて、自分の頭を新しい体に移