ワイズマンのドキュメンタリーの楽しさは、観客に観察しながら想像するという体験を与えてくれるところにあると思います。ほとんどの作品は病院や動物園など場所や組織がテーマになっていますが、まずそれがどういう場所なのかよくわからない状態が続く。 それはワイズマン自身がリサーチするように撮り、「ここはこういう場所なのか」と理解していく過程が、編集で再圧縮されて提示されているから。それを観ながら観客は想像力を作動させ、ワイズマンの理解への過程を追体験できる。これほど楽しいドキュメンタリーってなかなかないんじゃないかと思いますね。 その意味で、ワイズマンの特徴として知られるナレーションやテロップを使わないという戦略は、圧倒的に正しい。そうしたものを入れてしまうと、この想像力を作動させる楽しみが潰されてしまうので。 フレデリック・ワイズマン(映画監督)/1930年アメリカ・ボストン生まれ。67年、初の監督
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