■学術会議の自立をそぐ政府方針 この10年ほどの間に、日本の安全保障体制のあり方が大きく変化した。国際情勢への対応という側面はあるだろうが、不穏なのは、それと並行して戦後の日本国憲法の築き上げた平和や自由を損なう動きが進展していることである。憲法第23条が掲げる「学問の自由」がその中で実質的に切り崩されつつある。科学の歴史を研究する私としては非常に気がかりである。 過去において政治が国民の自由を大きく制限する方向に向かうとき、学者集団は大抵、最初のターゲットであった。たとえばプーチン政権は2010年代にロシア科学アカデミーの財源を奪い、会長人事権にも干渉する大改革を行っている。 日本でも、既に安倍政権時代の14年、学校教育法と国立大学法人法が改正された時点で国立大学の自治には…