小説のコンテストに応募した。落選した。まあ仕方ないと諦めていたところに、主催の出版社から電話が来た。 僕は複数作品を送っていたのだが、どの作品もすばらしかったと言われた。なら入選させろよと思いつつ聞いていると、要するにゴーストライターにならないかという話だった。 僕の作品の質は高いと言われた。文章は手慣れている。ただ、出版してもまず売れないだろうと。テーマに話題性がない。作者も、30代ニートというのは魅力に欠ける。これが16歳女子高生とか80歳僧侶とかだったら面白かったんだけど、と。 ムカムカしながら聞いていたが、まあわからないでもない。 出版事情はなかなか厳しいらしい。たとえコンテストで大賞をとった作品だってそんなに売れるものではない。世間の人々はゲームやVチューバーに夢中で、本なんかもうほとんど読まないのだ。 一度詳しく話をということになり、僕はその出版社を訪れた。ここから先の話は、そ