第67回群像新人文学賞 受賞作「月ぬ走いや、馬ぬ走い」 沖縄、お盆のある日、ぼくはかなちゃんに〈こく白〉をしようとかんがえる。ニライカナイからご先祖さまたちがくるから行ってはいけないと言われていた海で、78年前に死んだ兵隊さんに出会う。恩賜の軍刀で敵兵を狙う彼の独白はやがて、生理中でイラつく女子高生のぼやきへと続き――。過去と現代の14の語りで紡がれる沖縄の暴力と性、戦争。 純文学の入り口は学校のプリント 新人賞受賞者のプロフィールを見るとき、まず年齢を確認してしまう。群像新人文学賞を受賞した豊永浩平さんは弱冠21歳。今も琉球大学に通い、卒論に追われているという現役の大学生だ。今年42歳の私にとっては自分の子どもであってもおかしくない年齢で、くじけそうになる。きっとZ世代ならではの瑞々しい感性が爆発した、中年では逆立ちしたって真似のできない小説を書くんだろう……。 ところが、受賞作『月ぬ走