人文界隈、象牙の塔で応仁の乱やってる間に世論を味方につけた維新に比叡山焼き討ちされて終焉しそう
新生デモクリトス(以下、略) どうです。簡単でしょう。それではリサ様を病院に置かれているスワンプに転送しましょう。 訪問者 ちょ、ちょっと待ってください。さっきまで私が話していたデモクリトス様はどこへ行ってしまったのですか? デモクリトス 同じ人間が2人存在すると都合が悪いので、オリジナルは消去されました。正確に言うと、オリジナルは原子レベルまで細かく分解された。もちろん、今はすでに、私がオリジナルですが。(続く) ※ この記事は『哲学者と象牙の塔』からの抜粋です。 『哲学者と象牙の塔』(著:田中正人)は好評発売中! ヒット作『哲学用語図鑑』の著者が、悩める現代人に贈る哲学ファンタジー。マンガと文章で構成される物語は、哲学入門にも、深く哲学を理解したい人にも最適。
デカルト そうですか。まあ、限界状況に立たされたときでしか、人は真理に気づくことができないと考えるヤスパースのような人物もいますからね。 訪問者 ヤスパース? どなたでしょう。 デカルト 実存主義の哲学者です。「限界状況に立たされたとき、人は包括者と出会う」。彼の言葉です。 訪問者 包括者? 誰ですか? デカルト ヤスパースによれば、包括者は人とは限りません。包括者とは、仕事や家事などの生活にとって大切な何かではなく、その人の人生にとって大切な何かだそうです。いずれにせよ、今回はお役に立てなくて申し訳ありません。 訪問者 そんなことはありません。お会いできて本当によかったです。 デカルト それは何より。ああ、それから……。先ほどお話に出たVRやAR機器なら、ここヴァルカンシュタイン城には、超高性能グラスの貸し出しがあります。私もよく、VRグラスで白亜紀の地球を旅したり、ARグラスでこの城を
訪問者 ちょ、ちょっと待ってください。さっきまで私が話していたデモクリトス様はどこへ行ってしまったのですか? デモクリトス 同じ人間が2人存在すると都合が悪いので、オリジナルは消去されました。正確に言うと、オリジナルは原子レベルまで細かく分解された。もちろん、今はすでに、私がオリジナルですが。 訪問者 細かく分解って……。テレポートというのは、素早く移動することではなくて、本人は消滅してしまい、別の場所で本人と同じ人物が誕生するということですか? デモクリトス どう解釈しようがあなたの自由です。ただ確かなことは、テレポート前の彼と、テレポート後の私は、全くの同一人物だということです。ちなみに今回は、テレポート後にオリジナルを消去する設定にしました。この設定だとオリジナルがテレポートの成功を確認できます。 ただ、違和感がある場合は、オリジナルのスキャンが終わった時点で、オリジナルを消去する設
(これまでのあらすじ) 仕事で何をやってもうまくいかない訪問者は、哲学者が住んでいるという象牙の塔を訪れる。人生について相談したい彼を待ち受けているのは、はたして──。 訪問者 これは……。 デカルト これは経験機械という装置です。 訪問者 経験? デカルト はい。アメリカの哲学者、ロバート・ノージックという人物の構想をもとに開発した機械です。このタンクに入れば、あなたが望むような一生をバーチャルの世界で送ることができます。 訪問者 バーチャル? いえ、私はメタバースで幸せになりたいのではなく、現実の世界で幸せになりたいのです。 デカルト メタバース? この機械はそのような次元の代物ではありません。この機械は、VRゴーグルを着けてネットの中に存在する仮想空間に入ってみたり、ARゴーグルで現実の見え方を盛ったりするのとはぜんぜん違う。経験機械はあなたの脳に直接作用します。 訪問者 と、言いま
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