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2023年3月、中央アフリカ共和国の金鉱山で、9人の中国人労働者が殺害された。同国政府は、地元の反政府武装勢力の犯行と発表したが、この奇妙な殺人事件の背後には中国とワグネルの私欲にまみれた確執があると専門家は指摘する。 2023年3月、在中央アフリカ共和国(CAR)中国大使館は、次のような厳しい警告を発した。 「外国人を狙った誘拐が増加している。首都バンギにいる在留中国人はそこから離れてはならない。それ以外の地域にいる人は、ただちに退去せよ」 それから1週間も経たないうちに、銃で武装した集団が金鉱山で働く9人の中国人労働者を惨殺した。 不可解な殺人事件 鉱山は、バンギから北東に車で数時間ほど行ったところにあり、被害者は中国企業ゴールドコーストグループで働いていた。事件は、同社が金鉱山で採掘を始めてすぐの、3月19日に起きた。 中央アフリカ政府は捜査の結果、国内の有力な反政府勢力「変化のため
2023年5月、米紙「ニューヨーク・タイムズ」は「長い間埋もれていた韓国の歴史」として、韓国政府によって米軍兵士との性行為を強いられた女性たちについて報じた。被害者女性たちはインタビューで、売春がおこなわれた「基地村」での恐ろしい経験や、韓国政府が自分たちをどのように利用し、見捨てたかについて語っている。 1977年、17歳だったチョ・スンオクは、ソウル北部の東豆川(トンドゥチョン)で3人の男に誘拐され、売春あっせん業者に売り飛ばされた。 チョは高校入学を目前に控えていたが、バレリーナになる夢を追う代わりに、常に監視下に置かれながら近くのクラブへ売春に通う5年間を強いられた。彼女の客は米軍士だった。 「慰安婦」という婉曲表現は、通常、第二次世界大戦中に日本軍により性行為を強いられた、朝鮮人や他のアジア人女性を指して使われる。 しかし、1945年に日本の植民地支配が終わった後も、韓国では女性
コンクリートは、世界で最も広く使われる建築資材だ。それはセメントに骨材、水を混ぜて固めたものだが、セメントの製造過程で大量の二酸化炭素(CO2)が発生する。英誌「エコノミスト」によると、その排出量は全人類が生成するCO2の約8%にもなり、温暖化が進むいま、コンクリート由来のCO2削減が求められている。 セメントは石灰岩を焼成し、主成分である炭酸カルシウムを分解することで作られるが、その際に副産物としてCO2が生じる。そのため、セメントを使わずにコンクリートを作る新たな手法が欧米を中心に生み出されている。 そこで注目されているのが、微生物だ。その使い方はさまざまだが、微生物を活用して固めたものは「バイオコンクリート」と呼ばれる。
チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世が、インドで行われたある式典で、少年に自らの舌を吸うように促す様子が写った映像が話題になった。この行為には批判が相次ぎ、ダライ・ラマからは事務所を通じて謝罪があった。スロヴェニア出身の哲学者スラヴォイ・ジジェクが、この事件の根底にあるものを論じている。 理解されなかったダライ・ラマの言葉 ダライ・ラマが、多くの人が出席していた式典で7歳の少年にハグを求め、さらに「私の舌をしゃぶれ」と言った映像が注目を集めた。欧米人の多くは、ダライ・ラマの不適切な行動を非難した。批判する人々は、彼が老いぼれたか、小児性愛者であるか、あるいはその両方だと考えた。 一方、チベットで舌を出すのは、自分は舌の黒い悪魔ではないと示す伝統的な行為であり、慈悲の心の表れだという指摘もあった。しかし、舌をしゃぶれというのは、その伝統にそぐわない。 実は、チベット語の正しい表現は「チ
「ここはポリアモリーにとっての安息の地」。米「ニューヨーク・タイムズ」紙はそう表現する。人口約8万人、マサチューセッツ州の町サマービルへようこそ。 2020年6月、サマービルは米国で初めて、「ポリアモリー」の人々に「事実婚の権利」を認めた自治体になった。それにより、彼らはパートナーの勤め先の福利厚生を享受したり、病院へ見舞いに行ったりできるようになった。ポリアモリーとは、「全員が同意し、状況を理解したうえで複数人での恋愛関係を持つこと」である。この町はここ4年間、ポリアモリーの世帯に向けられる差別を制限する数々の取り組みをおこなってきた。
作家の村田沙耶香には「イマジナリーフレンズ」、空想上の友達がいる。子供の頃からの長い付き合いだ。 村田は親から、料理をするよう、「女の子らしく」振る舞うように教えられて育った。そうすればいつか、お金持ちの男性と結婚できるから、と。「身体も、人生も、自分のものだとは思えませんでした」と村田は語る。だから、イマジナリーフレンズと一緒に宇宙船に乗って、自分の居場所だと感じられるような惑星に飛んでいくことを夢見ていた。 村田は一貫して、「普通」とは何かを問いかけ、家族の在り方を疑問視する物語を綴ってきた。そうした作品は、彼女自身が生まれ育った保守的な国・日本で多くの共感を呼んでいる。半自伝小説『コンビニ人間』は2016年に芥川賞を受賞。すでに30ヵ国語以上に翻訳され、売り上げは150万部を超えた。 村田の小説は、日本文学の翻訳作品の新時代を切り開いたと言える。『コンビニ人間』の英訳版が出版されたの
人類はなぜ生成AIに幻覚を見るか そもそも「幻覚」とは、現実には起きていない(少なくとも一般的、唯物論的条件においては発生していない)現象を、人間の脳が認識してしまう謎の能力を指す言葉だ。心理学、薬物、そしてさまざまなタイプの神秘主義において広く用いられるこの言葉を使うことで、AI支持派はAIの可謬性を認めつつ、同時に彼らがもっとも好む「AI神話」を強化している。 その神話とはすなわち、AIという大規模な言語モデルを組み立て、そこに人類がこれまで書き、話し、ビジュアルに表現してきたことのすべてを教えこんだ結果として、AIは我々人類という種の飛躍的な進化のきっかけとなる「生きた知性」へと進んでいるのではないか──というものだ。 たしかにAIの世界では、常軌を逸した幻覚が蠢(うごめ)いている。だが「幻覚」を発生させているのはチャットボットではない。それはAIを解き放ったテック系のCEOたち、そ
幻覚1:AIは気候危機を解決する 「AIのプラス面」リストでほとんど決まって最初に挙げられるのが、AIシステムはどういうわけか気候危機を解決する、というものだ。世界経済フォーラムから外交問題評議会、ボストン・コンサルティング・グループに至るまで、我々はこの手の言説をあらゆる人たちから聞かされてきた。 彼らいわく、「炭素排出量との戦いおよび環境に優しい社会の構築を志向するすべてのステークホルダーは、より多くの情報とデータに基づいたアプローチを採用するためにAIを用いることができる。またAIは、最もリスクの高い地域に対する世界的な気候対策の努力の程度を計り直すためにも用いられうる」。 グーグル元CEOエリック・シュミットは米誌「アトランティック」のインタビューで、AIに関するリスクは取る価値のあるものだと答えた。そして次のように語っている。 「世界の最重要問題の数々を考えてみると、これらは本当
──日本では、数値的・物理的な「事実」や個別の「データ」を重視するあまり、哲学的な概念や立場を重視せず、貶めることさえあります。その傾向は欧米でも見られるのでしょうか。 あるとも言えますが、欧米と日本では文化的な背景が違うのではないかと考えます。 東洋の文化はより実存的な事実から出発するのに対して、西洋の文化は観念から出発します。そのため、日本は、ある種の集団的な実存主義だと言えます。つまり、誰もが相互に結びつきを持っており、みんなが直面する現実に合わせて容易に考えを変えてしまいます。考えを変えても、それは観念的な矛盾にはならず、問題ともみなされないということです。 反対に西洋では、自らの観念的な立ち位置と相容れない個別の選択は「矛盾」になります。たとえば、保守主義者を自称し市場を持ち上げている人が、電気自動車への補助金政策を望むなどということは「矛盾」なわけです。観念が先行し、その観念の
──ウクライナでは戦争が起きています。私たちはカントの『永遠平和のために』を読み返すべきですか。それとも、それを上回る戦争と平和についての哲学はあるのですか。 ウクライナだけでなく、米中間で紛争が勃発する一歩手前ですから、いまほどカントが必要とされる時代はないといえます。しかし、私の考えを言うと、カントは少し考えが甘かったです。 これはバーグルエン賞が文化や文明の枠を超えて受賞者の選考をする話と重なるところがありますが、カントの考えが甘いのは、彼が西洋の枠組みのなかで思考し、それを世界全体に投影しているところです。 実際の世界には、西洋文明だけでなく、中華文明もあります。現在の中国は、儒教の長い伝統を引き継いだ、規律の行き届いた政党によって統治されている一種の単一国家です。これは西洋のリベラルな統治とは、まったく異なったものです。 AIに関しても、西洋と中国は対照的です。オープンAIのよう
──日本人に「存命の北米の哲学者の名前を一人挙げてください」と尋ねたら、過半数がマイケル・サンデルの名前を口にすると予想されます。一方、バーグルエン賞を受賞したチャールズ・テイラーやマーサ・ヌスバウムを挙げる人は少数派にとどまる気がします。これはマイケル・サンデルが過大評価されていることを意味するのでしょうか。 サンデルと40年来の知り合いである私に言わせれば、過大評価はありません。ただ、米国では、中国や日本ほどの知名度がないのも事実です。もちろんハーバード大学では授業は大人気です。しかし、日本や中国とは異なり、ホールに1000人を超える数の一般市民を集めて話せるほどのロックスター級の人気は米国ではないのです。 中身のある哲学者だということは間違いありませんので、選考委員の誰かがノミネートすれば、いつかバーグルエン賞を受賞する日も訪れるのかもしれません。 サンデルの人気についていえば、米国
──バーグルエン賞では、選考委員はどんな議論をして受賞者を決めるのですか。 選考委員はバーグルエン研究所から独立して受賞者の選考をしているので、選考委員ではない私は、今回の賞の選考の際にどんな議論があったのかは知りません。毎年、代わり番で6人の有識者に選考委員を務めてもらっています。2022年度の選考委員長は神経学者のアントニオ・ダマシオでした。 この哲学賞の目的の一つは、西洋の思想家だけでなく、西洋以外の地域、とくにアジアの思想家にも目を向けることです。それで選考委員会には、中国人哲学者の汪暉(ワン・フイ)と、香港出身で現在はドイツ在住の哲学者ユク・ホイの2人のアジア系の選考委員もいます。柄谷をノミネートしたのは、この2人でした。 柄谷の思想でとくに評価されたのは次の2点です。一つは、哲学が生まれたのはアテナイではなく、その前の古代イオニアの「イソノミア(無支配)」から生まれたという着想
マッチングアプリに載せるプロフィールを書こうとChatGPTに相談したら、このチャットボットが魅力的な男性となって返事をしてきた──。街にあるカフェで待ち合わせた「二人」に起きたこととは。 この記事は、愛をテーマにした米紙「ニューヨーク・タイムズ」の人気コラム「モダン・ラブ」の全訳です。読者が寄稿した物語を、毎週日曜日に独占翻訳でお届けしています。 ハーバード・スクエア近くの小洒落たカフェ「ヌバー」で、オンラインで知り合った男性、デイビッドと待ち合わせていた。 彼は完璧な男性に思えた。最近退職したばかりの大学教授。現在70代前半で、ブルックリン育ち。ニューヨーク、カリフォルニア、マサチューセッツで心理学と社会科学を教えていた。離婚していて、カリフォルニアに成人した2人の息子がいる。私たちの共通の趣味は、ハイキング、サイクリング、それに読書。二人とも伴侶に同じ資質を求めていた。 彼はデートに
世界中で支持された漫画『神の雫』が、国際ドラマ『神の雫 Drop of God』として実写化された。一足早く配信されたフランスの日刊紙「ル・モンド」は『神の雫』がワインの本場で支持された理由を分析している。 雫は止めどなく流れ、やがて大河となる。『神の雫』は20年ほど前、普段飲んでいたワインを題材にしようと考えた姉と弟によって生み出された日本の漫画であり、44巻の一大絵巻となって世界的な評価を得ている。そして、この漫画に取り上げられたことで、多くのワイン生産地の運命が変わった。いま新たな実写ドラマ版『神の雫 Drop of God』がフランスでは4月21日からApple TV+で配信されている。 この作品は、真のワイン頌歌である。たとえば、ミシェル・コラン=ドレジェ醸造所の2000年のシュヴァリエ・モンラッシュについては、第18巻で次のように述べられている。 「このワインには、不用意に近づ
「米国人が魚を生で食べるはずがない」 新之助での寿司と後日談には、さまざまなバリエーションがある。金井とウルフの両家に伝わるこのエピソードは、それぞれ微妙に異なる要素を強調し、異なる教訓を語っている。 しかし、いずれのバージョンでも共通していることが一点ある。寿司が次のブームになるというウルフの提案を、金井が信じなかったことだ。説得が必要だったのだ。 ウルフは、寿司をロサンゼルスで一般的な高級レストランと対比することから売り込みを開始した。敦子によると、ウルフは以下の口上を垂れたという。 「フランス料理のシェフは、とても高慢だ。高い帽子をかぶっていて、高ければ高いほど冷淡で、そこに楽しい要素は存在しない。だが、寿司の職人たちは、友達も同然だ。そして、寿司はエンターテインメントなんだ」 「いや、米国人が魚を生で食べるはずがない!」そう金井は言い返したと、娘は言う。 マーティン・ウルフの証言に
オスロの副市長シリン・ヘルヴィン・スタヴは、自らノルウェーの「偽善」と呼ぶ問題があることを認識している。ノルウェーは温室効果ガスを削減すべく努力している一方で、多くの原油とガスを生産しているのだ。昨年、ノルウェーの化石燃料の輸出高は25兆円にものぼった。 「私たちは汚染を輸出している」とスタヴは言う。彼女が属する緑の党は、2035年までに原油とガスの生産を廃止する目標を掲げている。 しかし、ノルウェー政府が原油とガス生産から手を引く様子はない。 ノルウェー石油エネルギー省の副大臣アムンド・ヴィクは声明で、ノルウェーは欧州のエネルギーの安全を保障していると述べた。また、複数の資源を生産していて、現在開発中の資源もあるとも付け加えている。 EV化による失職は増えたのか
米国に旅行に訪れると「チップ文化」に悩まされる。これが日本に導入されたら、あなたはどう思うだろうか。「悪しき風習」のチップ文化は日本でも広まるだろうか──英紙「フィナンシャル・タイムズ」が報じた。 チップ文化を日本に広めよう 新規事業の失敗に喜ぶ機会は少ないが、密かに進行していた「チッププロジェクト」が失敗していたという事実には安堵する人も多いのではないだろうか。 イマイチなアイデアが量産されたコロナ禍だったが、その一つとして誕生したのがこの「チッププロジェクト」だ。これまで、東アジア諸国の国民は静観するだけで済んでいた“チップを払う”という米国の悪しき慣習を、なぜか日本にも導入しようとたくらんだ取り組みだ。 このプロジェクトは、多くの加盟店で利用できる定額のチップ制度を導入することで、パンデミックによって打撃を受けていた飲食業界の従事者たちを救うという趣旨のもと、「炎の講演家」こと鴨頭嘉
ある日、小学生が帰宅途中、道端に人間の指が落ちているのを見つけた。この切断された指は、宅配業者が仕事中に指を挟んで切断したものだった。宅配業者はなぜ切り落とした自分の指を拾わなかったのか……そこから見える日本企業の問題点とは。 道端に落ちていたのは… 4月のある月曜日の午後、普段は平和そのもので風光明媚な海沿いの街、舞鶴で、歩いて帰宅中の小学生が路上に人間の指が落ちているのを見つけた。 小さな子供にとってはトラウマになりかねない恐ろしい出来事だが、日本全体、とりわけ日本企業にとっては、それ以上に大きな衝撃だったことは間違いない。この事件は、古くから日本を弱体化してきた恐怖を浮き彫りにしただけでなく、新しく有益なやり方に置き換える緊急性をも示している。 この切断された指が提示したのは、その持ち主である60代の宅配業者の運転手が、車のスライドドアで切断された指を、故意に車道に放置したという問題
ファーウェイやアリババ、テンセントなどの中国企業が競争力を発揮して成功を収める一方で、中国進出でつまずく欧米企業は少なくない。アマゾンやカルフールの失敗事例は有名だ。なぜそのようなことが起きるのか? 『龍の策略──中国人起業家が不確実な世界で力を発揮する理由』(未邦訳)の共著者サンドリーヌ・ゼルビブとアルド・スパンヤースによると、その問いの答えの一つはアジア式経営なのだという。この2人は中国ビジネスの事情通だ。ゼルビブはアディダスの子会社を中国で起ち上げた経験があり、スパンヤースはラコステの中国支社の元CEOだ。 現在、上海でEコマース企業を経営するゼルビブに、仏誌「レクスプレス」が話を聞いた。 発想力や思考力よりも重視されるもの ──中国式経営と欧米式経営の最大の違いは何ですか。 一つだけ挙げるなら、中国式経営では観察力が高く評価されます。中国で天才だと言われるのは、発想が天才的な人では
ハラリの危惧するディストピアが現実になれば、そこに立ち現れる偽物は、デジタル合成されて生み出された単なる人間もどきではない。人は親類縁者や友人など、身近な他者の影響を最も受けやすい。そんな偽物が身近な他者として、ある製品が優れていると勧めてきたり、気候変動やワクチン、移民に関する自説の正しさを説得しようと近づいてきたりしたらどうだろう。それは、かつて目にしたことがない言論操作能力を持つはずだとハラリは警告する。 過去10年、ブラジルから米国に至るまで、選挙結果を左右した醜聞ではソーシャルメディアによる情報操作が取り沙汰されてきたが、それさえも色褪せて見えるだろうと彼は言う。英政府通信本部(GCHQ)長官(当時)のジェレミー・フレミングは4月、AIが生成した偽情報は重大な脅威であるとスナク政権に警告している。ハラリはこう話す。 「これは権威主義国家より、とりわけ民主主義国家にとって深刻な脅威
イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ(47)にとって、人間が作り出す“物語”は非常に重大な要素だ。語り(ナラティブ)には形がない。だが、ときに大洋を超えて人間特有の能力を押さえつけたり団結させたりするのは、この無形の語りだ。 彼は著書『サピエンス全史』で、この無形の語りを考察の中心に据えた。約10年前、本書の英語版が出版されるとベストセラー入りし、ハラリを現代の予言者的地位へと押し上げた。だからなのだろう。ハラリは、物語の創作に長けた人類に挑む勢力が台頭しつつある現状を心の底から懸念する。その勢力とは、人工知能(AI)だ。 「これは歴史上初の、物語を生み出すテクノロジーです」と、ハラリは語る。 ハラリは宗教、金融、国家などの“物語”に対する我々の集合的信仰こそが、人類に地球の支配者としての力を与えたのだという。たとえば、もしポケットのなかの5ポンド紙幣を見た店員が、ただの青い紙としか
データの復元と引き換えに身代金の支払いを要求するランサムウェアによる被害が世界中で急増している。日本企業も攻撃に遭っており、警察庁に報告された2022年の被害数は計230件と、前年比で57.5%も増えた。しかし英紙「フィナンシャル・タイムズ」は、日本企業によるその対策は独特で、犯罪集団に簡単には屈していないと報じている。 甘すぎる日本人のセキュリティ意識 毎年4月、日本で大学を卒業したばかりの若者は社会人になり、会社のITネットワークに初めてログインする。それに合わせ、政府は強力なパスワードを作るように促すキャンペーンを実施している。 2022年、国際的なサイバーセキュリティグループの「ノルドパス」は、世界30ヵ国で頻繁に使われるパスワードについて調査した。それによると、日本人に好まれるパスワードは依然として「123456」であることがわかった。それでは平均1秒以内にハッキングされてしまう
不合理と後退が世界を支配する今、スティーブン・ピンカーのような筋金入りの楽観主義者に賞を授与するのは、カウンターカルチャー的な行為にすら映る。明快かつデータ豊富なエッセイで有名なこのカナダ人の認知心理学者は、スペイン・BBVA財団の「知のフロンティア賞(人文・社会科学部門)」を受賞した。 人類の過去と、とりわけ未来に対する熱いビジョンで知られる彼は、『人はどこまで合理的か』や『21世紀の啓蒙』の著者でもある。ピンカーは、こう話す。 「私が『楽観主義者』と呼ばれていることは、ジャーナリストや知識人がいかに『進歩』というものを理解できなくなっているかを示しています」 なぜ、私たちは人間の進歩を信じられないのか ──知のフロンティア賞を、以前から尊敬しているオーストラリア出身の哲学者、ピーター・シンガーと共に受賞することになりましたね。 ええ、シンガーのことは1981年に『拡大する輪』(未邦訳)
インドを蝕むヒンズー至上主義団体 いまインド国内で起きているインクルージョン(包摂)の暴力とエクスクルージョン(除外)の暴力は、この国を根底から覆し、世界におけるインドの意味とその位置付けを考え直さなければならなくなるかもしれない、社会的動乱の前兆なのです。 インド国憲法は、「インドは世俗の社会主義共和国である」と定義しています。ここで私たちインド人の考える「世俗」とは、世界の他の地域の考え方と若干異なっています。私たちにとってそれは、法の下ですべての宗教に同等の権利が保障されている社会を意味します。 実際には、インドは世俗であったことも社会主義国であったこともありません。インドは、これまでずっと高位カーストのヒンズー教徒の国として機能してきました。
日本の自動車メーカーが世界のEV市場で苦戦を強いられる一方、米国では中古の「軽トラ」ファンが増えているという。その人気の秘密は、米国車や新車が取りこぼしているニッチなニーズを満たしているところにあると、英経済誌が報じている。 ノースカロライナ州ローリー郊外で農業を営むジェイク・モーガンは、数年前、自分が所有する土地を移動するための車両がほしくなった。 当初は、サイド・バイ・サイドと呼ばれるオフロード車両の購入を検討していた。だがある日、米農機具メーカー「ジョンディア」の車両の製品レビューを見ているときに、次のような気になるコメントを見つけた。 「軽トラを買えばいいのに」 「信じられないほど便利」 「軽トラ」とは、四輪の小さなピックアップ・トラックのことで、主に日本で製造される。日本では、小型車にかかる税金のほうが大型車よりも安いため、その利点を生かした車両だ。 軽トラについて調べはじめたモ
集団を力強く引っ張る能力のある人は一定数いるが、彼らの「リーダー気質」は何に由来しているのだろうか。最新の調査によると、それは生まれた瞬間から決まっているようだ。 生まれ順は人格形成に影響する 「生まれながらのリーダー」なんて言葉は、現実ばなれした陳腐なものに思われるかもしれない。 たとえば出来の悪いビジネス書のタイトルにもありそうだし、口八丁のコメンテーターが使いそうな言い回しでもある。だが、「生まれながらのリーダー」は実在する。研究者たちはその鍵となる変数を発見した。 それは、遺伝子でも親でも仲間でもない。生まれ順なのだ。 長男がCEOや政治家になる確率が、弟たちよりも30%高い──テキサス大学オースティン校のサンドラ・E・ブラックや、スウェーデン労働市場・教育政策評価研究所のビョルン・オカートら数名の経済学者が、最新の論文でそう発表した。 男性のみを対象にしたこの論文は、長男は弟たち
週末は充電スタンドが大混雑 ノルウェーのバンブル──そこは首都オスロから、松とカバノキが両側に並ぶ高速道路を南に160キロほど走った場所に位置する街だ。バンブルの給油所は、電気自動車が主流となった未来を垣間見せてくれる。 テキサス発祥のコンビニエンスストア「サークルK」が運営するサービスエリアには、ガソリン給油機の数をはるかに上回る電気自動車用の充電スタンドがあふれている。夏の週末になると、オスロの人々が地方のコテージへ向かうため、充電を待つ行列で高速道路の出口が混雑することもしばしばだ。
外国語を話すことができるからといって、その人がその言語を母国語へきちんと置き換えることができるとは限らない。とくに文芸翻訳においては、単なる語学力だけでなく、その国の文化に対する知識も必要となってくる。だから文芸翻訳者はどの作家の作品であっても、複雑な職人技を必要とされるわけだが、それが村上春樹の作品となればなおさらだ。村上作品の英語翻訳を手がけるフィリップ・ガブリエルに翻訳の裏話を聞いた。 2021年4月、フィリップ・ガブリエルの新しい翻訳本が、英語圏で広く話題をさらった。発表から一週間も経たずして、同書は米「ニューヨーク・タイムズ」紙のベストセラーリストで11位に浮上した。だが、もしニューヨークやロンドンの豪勢なレセプションを回って彼の姿を探そうとするなら、それは間違っている。 ガブリエルはアリゾナ州ツーソンで、およそ40年間続けてきたことを粛々と進めている。彼は、アリゾナ大学で日本文
中国との間に、隣国同士であるがゆえのさまざまな問題やしがらみを抱える日本。その対中政策について国内では、対立を煽りすぎ、弱腰、中途半端などなど、さまざまな考えがある。 いま、欧米の国々の多くも、国際社会で大きな力をつけるとともにますます強権的になる中国にどのように向き合うべきか、頭を悩ませている。それらの国の目には、日本の対中政策はどのように映っているのか。 ひとつの見方として、ドイツの「シュピーゲル」誌に掲載されたコラムを紹介する。そこでは、日本の対中政策がしたたかにバランスをとるものだと高く評価され、欧米もそれを見習うべきだと主張されている。 混迷を極める対中政策 中国のこととなると、西側の同盟諸国は最近、一致団結した態度をとれず、さながら学生集会のようだ。 米国では、民主党と共和党が、どちらが中国に対してより好戦的になれるかで張り合っている。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、
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