第一回 世界は再魔術化しつつあるのか? 倉数茂 0 宗教の凋落? それとも再魔術化? マックス・ウェーバーが、近代を脱魔術化の過程として捉えたことはよく知られています。宗教改革と啓蒙主義以降、それまで世界を覆っていた宗教的力能は徐々に領域を狭めていき、やがて合理主義的思考に取って代わられる。これがウェーバーら、初期社会学の巨人たちの見通しでした。ではウェーバーの時代から約一〇〇年がたった今、世界の脱魔術化は完成したのでしょうか。 世界112の国で1981年から2020年まで行われた大規模なアンケート「世界価値観調査」のデータに基づいて、ロナルド・イングルハートは、宗教心はますます凋落しつつあると結論づけます(注1)。グローバルに見るのなら、時代が下るにつれ、そして若い世代ほど、一人一人の信仰心は低下し、中絶や同性愛を忌むべきものとは考えず、宗教的規範に囚われず自分の人生を選択している。世