取材に受け応えしながら、いっぽうでこの女性の年齢はどのぐらいなのだろうと思いめぐらせていた。年齢を訊くのは失礼なので、あとで調べた。五十八歳とわかった。 日本で五十八歳の現役女性記者が何人いるだろうか。しかもテーマを見つけたら、さっとニューヨークから東京まで、働き盛りの商社マンのようにひとっ飛びでやってくるような女性記者が、である。 ~略~ アメリカはベテラン記者があたりまえに活躍するのに、日本ではどうして若い記者しか現場に行かないのだろうか。そういうシステムによってもたらされる弊害について考えてみたい。 (猪瀬直樹『禁忌の領域』文藝春秋、1993) こんばんは。私の師匠の一人は58歳で、ありとあらゆる出世の誘いを断わり、ベテラン担任を続けています。そして毎年のようにクラスづくりの極意を同僚や保護者に提示し続けています。だから《若い記者しか現場に行かない》弊害は何となく想像できます。単純に