記事:春秋社 カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ「Wanderer above the Sea of Fog, (German:Der Wanderer über dem Nebelmeer ) (1818)(雲海の上の旅人)」 書籍情報はこちら (前編はこちら) 懐疑主義者ではなく自然主義者のニーチェ 「事実など存在しない、ただ解釈があるのみだ」(『力への意志』第481節)。ニーチェの入門書で必ずと言っていいほど引用される言葉です。このセンセーショナルなフレーズに基づきながら、ニーチェは客観的な事実や真理の存在とその認識可能性を全否定し、すべては単なる解釈にすぎないと唱えた、というような紹介をされるのがお決まりでしょう。これはざっくり言うと、20世紀後半、特に1970~80年代頃からフランスやアメリカの思想家たちを中心に流行した懐疑主義的なニーチェ読解です。この読み方は長い間アカデミアの