🌷昼近くになって殿上の詰め所へ二人とも行った。 取り澄ました顔をしている源氏を見ると中将もおかしくてならない。 その日は自身も蔵人頭《くろうどのかみ》として 公用の多い日であったから至極まじめな顔を作っていた。 しかしどうかした拍子に目が合うと互いにほほえまれるのである。 だれもいぬ時に中将がそばへ寄って来て言った。 「隠し事には懲りたでしょう」 尻目《しりめ》で見ている。 優越感があるようである。 「なあに、それよりもせっかく来ながら無駄だった人が気の毒だ。 まったくは君やっかいな女だね」 秘密にしようと言い合ったが、 それからのち中将はどれだけあの晩の騒ぎを言い出して 源氏を苦笑させたかしれない。 それは恋しい女のために受ける罰でもないのである。 女は続いて源氏の心を惹《ひ》こうとして いろいろに技巧を用いるのを源氏はうるさがっていた。 中将は妹にもその話はせずに、 自分だけが源氏を